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ブッダ伝 生涯と思想


著者 : 中村 元
角川ソフィア文庫
株式会社KADOKAWA 東京 2015
定価 1000円(税別)










 私の生家は禅宗の檀家である。それで私が仏教と関わる機会は幼少時からそれなりにあった。しかし、今の私自身と寺の付き合いは盆と春と秋の彼岸の日くらいだけである。その程度だが、仏教は他の宗教に比べると親近感を感じる。

 ここでブッダの考え方を著者から学んで皆さんに紹介するのは私の能力を超える。それで本文に出てくる言葉のいくつかを断片的に紹介したい。ブッダの言葉もあるが著者の解説もある。

「仏教には特定の教義がありません。ブッダは自分の教えを定型化して説くことを望まず、その人に応じ、その状況に応じて法を説いたのです。ですから、さとりの内容も聞いた人によっていろいろな受け取り方をしているわけです。」

「過去の歴史をふり返ると、ガリレオの地動説の例を引くまでもなく、しばしば宗教が進歩を阻害してきました。しかし仏教を信奉する民族の諸国では、宗教と合理主義、あるいは宗教と科学の衝突がほとんど見られなかったのも、初期の仏教がこのようなものの考え方に由来していたからでした。」

「他の世界宗教と違い、絶対神が説法の開始を決めたのではありません。人間ブッダ自身が説法の開始をみずからの意志で決定したのです。」

「どの方向に心でさがし求めてみても、自分よりさらに愛しいものをどこにも見出さなかった。そのように、他の人々にとっても、それぞれの自己が愛しいのである。それ故に、自己を愛する人は、他人を害してはならない」

「『殺そうと争闘する人々を見よ。武器を執って打とうとしたことから恐怖が生じたのである。』 ・・・ このことばは、現代の世界情勢においても、じつに示唆に富んだ教えだと思います。武器をとって他国を脅かすと、脅威を感じた相手国もやはり武器で応戦する。そこに戦争が起こり、殺戮が起こるのです。」


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